ITP2.1の登場 ~サードパーティだけでなくファーストパーティクッキーにも影響?~

ITP2.1の登場 ~サードパーティだけでなくファーストパーティクッキーにも影響?~

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Apple社が2019年3月にリリースしたアンチトラッキング対策のITP2.1は、iOSのブラウザSafari12.1から標準搭載されています。このITP2.1が、これまでのITP1.0・ITP2.0と何が違い、世の中にどのような影響を与えるのか? を解説します。

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ITPのおさらいと変遷

ITPとは、Intelligent Tracking Prevention(インテリジェント・トラッキング・プリベンション)の頭文字をとったもので、主に広告配信に使用されている「複数のWebサイト(ドメイン)間でユーザを追跡する機能」を制限するためにApple社によって提供されたテクノロジーです。通常、ユーザを追跡するための機能にはクッキー(Cookie)が利用されています。これまでのITPは、クッキーの中でもユーザが訪問したWebサイト以外の企業によって収集されるサードパーティクッキー(3rd Party Cookie)が対象となっています。

※訪問したWebサイトが収集するクッキーは、ファーストパーティクッキー(1st Party Cookie)

ITP1.0

Safari11.0より搭載されました。24時間以内に再度アクセスの発生しないサードパーティークッキーは自動的に破棄される仕様です。これにより、Safariブラウザ搭載端末(主にiPhone)に対してターゲティング広告が配信できないもしくは、精度が落ちるという影響を受けるようになりました。

ITP2.0

Safari12.0より搭載されました。ITP1.0では24時間という時間制限がありましたが、ITP2.0ではサードパーティクッキーが即時破棄されるようになりました。Safariブラウザにおいてサードパーティクッキーが実質利用不可能となりました。これにより、サードパーティクッキーを使ったターゲティングによる広告配信は、その配信量が減少する影響を受けました。また、各種マーケティング効果を計測するツールベンダにおいては、サードパーティクッキーによる計測では正確性を欠くことになるため、ファーストパーティデータとの連係を進めるなどの対応に追われました。

ITP2.1の特徴は?

最新のITP2.1では、サードパーティクッキーではなくファーストパーティクッキーが対象となりました。サードパーティクッキーは、ITP2.0で即時破棄となっているので当然の流れかもしれませんが、Googleアナリティクスなどの計測ツールでファーストパーティクッキーが使われていますので、その影響範囲は大きいといえます。

具体的に何が制限されるのか

ファーストパーティクッキーの有効期間が7日間に制限されるようになりました。サードパーティクッキー制限の抜け道として、サードパーティクッキーをファーストパーティクッキーとして保存し広告配信に利用している企業にとってはダメージが大きいといえます。8日目以降はクッキーデータがリセットされるため、月間アクセスユーザ数(MAU)が水増しされるなどGoogleアナリティクスを利用する企業にも影響がありそうです。日本では他国に比べiPhoneの保有率(Safariブラウザの割合)が高いため、ITP2.1に対する各企業の対応により注目が集まりそうです。

今後の流れ

これまでのITPでは、サードパーティクッキーの利用を制限するものでしたが、今回のITP2.1ではファーストパーティクッキーの利用が制限されるようになりました。効果測定ツールを提供する企業では、計測漏れが発生することから対応に迫られており、ローカルストレージを利用した回避策も発表されつつあります。しかし、Apple社においてもそのような動向は把握しており、今後ローカルストレージもITPの対象になる可能性が高いといえます。ITP1.0から、2.0、2.1とアップデートの間隔が短いことからも年内には次のリリースがあるのではないかと考えられます。ITPのアップデートに対して次々と手を打つことも重要ですが、クッキーが個人情報とみなされる国もありますので、クッキーを使わない技術・サービスの選定や測定結果をより正確な値に推定・補正するような技術開発にシフトすることも考えなければなりません。

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